「問題社員がいるので、解雇したい!もう我慢の限界だ!」
「問題社員を解雇するにはどうすればいいのだろうか」
と悩んでいませんか。
結論から言えば、問題社員は解雇するのではなく、自分から会社を退職したいと思ってもらえるように対処しましょう。
なぜなら、日本の労働基準法は労働者のための法律であり、社員を解雇することが前提の法律とはなっていないためです。
ただし、解雇をどうしてもしなくてはならないケースも当然ながら存在します。
この記事を読めば、問題社員の解雇について真の意味で正しい対処法を理解することができます。
問題社員の解雇について悩んでいる方はぜひ、最後まで読んでいって下さい。
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【結論】問題社員を解雇することは原則、難しい
問題社員を解雇することは原則、難しいです。
なぜなら、日本の労働基準法は労働者のための法律であり、小さな落ち度で社員を解雇することは認められていないためです。
遅刻や欠勤を繰り返す社員であったとしても、何度も指導を繰り返して改善されない場合にやっと解雇することが可能となります。
問題社員を解雇したい気持ちは理解できますが、解雇は難しいため、自己都合退職がもっとも安全な道となります。
また、問題社員の解雇には以下のような対処が難しいケースがあります。
- 無期雇用転換ルールで非正規でも5年を超えて勤務させたら正社員と同じ!
- 解雇は難しいが問題社員を放置するのは厳禁!
- モンスター社員を追い込むのではなくあくまでも気持ちよく辞めてもらう
それぞれについて解説します。
無期雇用転換ルールで非正規でも5年(厳密には2年11ヵ月)を超えて勤務させたら正社員と同じ!
「問題社員やモンスター社員といってもアルバイトや契約社員なら雇止めで対処すればいいだろう」などと考えていませんか。
無期雇用転換ルールという新しい労働関連法規が施工されており、非正規でも5年を超えて同一の企業が雇用すれば正社員と同じ雇用期間を保証する必要性があります。
ただし、正社員のように賃金を高くすることや、ボーナスを出す義務はありません。
お給料と福利厚生は正社員並みにせず、雇用期間のみが60歳まで義務化されます。
そのため、正社員以外に関しては普段から労務管理を徹底することが重要となります。
これまでは「バイトだからそんなに厳しく見なくても良いだろう」という状態から「仮に問題があるとすれば早く対処しないと一生あのやる気のないバイトが会社に居座るぞ!」という状態になるということです。
アルバイトの入社段階から雇用契約書を締結し、勤続年数の管理をしていくなどの労務管理を行うことが重要となります。
地味で非常に労力のかかる労務管理となりますが、大企業はほぼ完ぺきに近い水準でこの地味な労務管理を無期転換ルール施行以前からやっています。
例えば勤続2年11か月を超える直前の段階において期間満了で辞めてもらうか、無期社員に登用するか、正社員に登用するかを決定する試験を行うという方法もあります。
非正規雇用で契約年数を定めて契約社員を雇用していても、2年11か月を超えて契約社員を雇用すれば契約更新を断ることができなくなります。
そもそも、有期雇用は原則3年が上限となっているためです。
自動車メーカーには短期で高額の給与を手にすることができる期間工という臨時雇用の従業員がいますが、2年11ヵ月で雇止めとなります。
3年を超えて雇用すると雇止めをすることが出来なくなり、期間工という契約形態そのものが崩壊することから2年11ヵ月で退職金(満期慰労金150万円から200万円)などを支払って期間満了退職してもらうというルールが徹底されています。
つまり、多くの企業が「5年を超える前に契約満了通知をすればいいんだ」と考えていますが2年11か月を超えて雇用した瞬間に、いま雇用している非正規社員を60歳まで雇止めできなくなるということです。
昨今、ニュースなどで「4年半勤務の契約社員、無期転換を逃れるための雇止め無効」などという判決が流れていますが、そもそも論として非正規社員の雇止めリミットは2年と11ヵ月であり、2年11ヵ月を超えている段階で負けていたということです。
非正規社員に関しては勤続年数のカウントを必ず行うようにしてください。
また、すでにアルバイトや契約社員を2年11か月以上雇用してしまっているのならば、必ず無期雇用社員用の就業規則を作成してください。
早い企業であれば2018年9月ごろに政府の無期転換ルールの公表を受けてすでに無期社員用就業規則を作成し、労基署に届け出ています。
もしも就業規則が正社員用の就業規則しか存在せずに無期雇用社員が出現した場合、就業規則は正社員のものが適用されてしまうため、アルバイトや契約社員全員を正社員として雇うことにもなりかねません。
非正規雇用を大量に雇用している企業であれば、人件費が10倍以上になる可能性も高いです。
解雇は難しいが問題社員を放置するのは厳禁!
解雇は難しいですが、問題社員を放置することは厳禁です。
なぜなら、放置するのではなく始末書を書かせ紙による記録を残すべきだからです。
例えば遅刻をしてきた、致命的なミスをして取引先に迷惑をかけたなど様々なことで細かく始末書を書かせてください。
また、同時に二度とこんなことをするなとそのたびに指導してください。
この始末書や指導記録があまりにもひどい内容であれば、解雇が認められる可能性が大幅にアップします。
モンスター社員を追い込むのではなくあくまでも気持ちよく辞めてもらう
モンスター社員に腹を立てて追い込むような強硬解雇を取る企業は少なくありません。
しかし、感情は殺して気持ちよく退職してもらうようにしましょう。
なぜなら、社員と揉めても得をするのは社員だけだからです。
例えば少しだけ退職金を渡して退職してもらうといった方法です。
むしろ退職金を経営者側から提案して「あんなに会社に迷惑をかけたのに退職金までもらえた。良い会社だった」と思われた方が無難です。
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経営者の武器は労働者よりも多額の資本(お金)があるということ
経営者側が最大限認識すべきことは、経営者の武器は労働者よりも多額の資本(お金)があるということです。
なぜなら、労働者はお金がないがゆえに、会社を解雇されると困るためです。
「辞めてもらうことになって次の仕事が見つかるまで大変かも知れないが、この退職金を受け取ってくれ。あなたとは色々あったけれどせめて次の仕事が見つかるまでは生活が成り立つようにしてあげたい」と退職金を渡せばほとんど労使紛争も起こりません。
労使紛争解決のためにお金を払うことは負けではなく、強力な武器で敵を倒したと考えることが最もストレスの少ない考え方です。
経営者側は会社さえ継続経営できれば、解決金を回収することが可能です。
また、リストラも綺麗に断行すれば「あの会社は胆力がある。懐が深い」といった評価をされることすらあります。
そして最も重要な点ですが、特別に退職金2か月分から3か月分を問題社員に渡して自己都合退職してもらえばユニオンも介入しようがありません。
なぜなら、ユニオンの団体交渉はそもそも論として、労働者が当面生活できるように金銭補償をして欲しいという内容が多いためです。
例えば失業保険が2か月と7日経過すれば出る方であれば、2か月と7日を過ごせるお金を先払いしておけばユニオンはそもそも登場できないということです。
辞めてもらいたい従業員の生活を経済的に追い詰めないこともとても重要な労務管理です。
また、従業員の感情を害していなければとりあえず生活できる状態のうちはもめ事を起こそうとはしません。
そうこうしているうちに労働者側は失業保険を貰いながら転職活動をするため、対処を間違えなければ大きなトラブルに発展しないことがほとんどです。
退職届を絶対書いてもらおう!紙きれ1枚が天国と地獄を分ける!
問題社員を解雇したいと思っている方は、解雇ではなく「どうすれば退職届を取れるのだろうか」と頭を悩ませるべきです。
なぜなら、退職届さえ問題社員から取れたら、もうそれでほぼ9割のトラブルは終了するためです。
解雇トラブルでは、退職届の有無が天国と地獄を分けます。
退職届は、労働者本人が自ら直筆で書き捺印した、退職を自らしたいと経営者に通告した重要な意思表示となっているためです。
例えば問題社員とトラブルが起こり、解雇をするとかなり大きな紛争に発展していきます。
しかし、何らかの優遇条件や、多少強引でも退職勧奨をして退職届さえ取っていればトラブルは消えます。
例えば問題社員に対して「お前はこんなに悪いことをしているのだから、退職届を出せ!このままいくと懲戒解雇だぞ!いまなら退職金優遇して自己都合退職にしてやるぞ!給与保障は2か月分でどうだ?」と迫って退職届を書いて貰えば、それで会社は勝ちになるということです。
ちょっと脅しのように見える迫り方ですが、退職勧奨そのものは会社に認められた権利です。
退職届さえとっておけば、解雇にはなりません。
強引ですが、究極的に言えば退職届があれば解雇したという扱いにはなりにくく、労働者は錯誤または脅迫・強要で退職願を書いたとしか主張できません。
「解雇を取り消せ!ふざけるな!」とは言えないのです。仮に強引に退職届を取ったとしても問題社員は「退職届を出したのは錯誤でした。取り消していただけませんか」というスタンスでしか戦えません。
解雇は立証責任が会社サイドにありますが、退職は立証責任が社員サイドに移転するためです。
ただし、社員が5人などの大人数でたった1人の労働者を取り囲み、現金100万円を見せながら「この100万円をやるからさっさと退職願を書け!」とやるような強引すぎる方法は辞めましょう。
実際に上記のような退職勧奨をして裁判に持ち込まれた場合、おそらく解雇無効になる可能性があります。
あくまでも脅迫・強要・錯誤がない状態で、スムーズに退職届を書いてもらう方法を取りましょう。
様々な会社が退職届を書いてもらうために腐心していますが、問題社員が直筆で書いた退職届には低く見積もっても100万円以上の値打ちがあるということです。
正社員を解雇するためのハードルは3つ
「正社員を解雇するためにはどのような条件があるのだろうか」と気になりませんか。
正社員を解雇するためには以下のとても高い3つのハードルがあります。
- 客観的に見て合理的かつ、社会通念上相当な理由が必要
- 解雇理由の明示義務
- 30日以上前に解雇予告
それぞれについて解説します。
客観的に見て合理的かつ、社会通念上相当な理由が必要
正社員を解雇するためには客観的に見て合理的かつ、社会通念上相当な理由が必要となります。
ほとんどの企業がこのハードルを越えることが難しいため、解雇が事実上できないのです。
例えば客観的に見て合理的な理由ですが、従業員側の能力不足や協調性不足、勤務態度などで「これは世間の誰が見ても全員が解雇されても仕方ないというだろう!」というレベルの水準です。
さらに厄介な文言として「社会通念上相当な理由が必要」という文言もつきます。
これは他の会社と比較し、判例など様々な要素と比べて問題社員に対する処分は重いか軽いかを裁判官がジャッジするということです。
つまり、この労働契約法は非常に抽象的であり、どのような判断がなされるかが分からない状態です。
客観的に見て合理的な理由があったとしても裁判官の世間常識によってはどんな判断をされるか分からないよ、ということです。
解雇理由の明示義務
次のハードルで起こることが、解雇理由の明示義務です。
この解雇理由が有効になるようなものを示せる企業が実は少ないです。
明らかに社会的な常識から外れた理由や、会社が選んだ解雇理由が杜撰な理由であれば間違いなく会社にとって不利となります。
また、裁判移行したときもこの解雇理由の明示義務が非常に重くのしかかってきます。
なぜなら、裁判では通常、裁判を起こした原告が立証責任を負うのが一般的なのですが、解雇に関しては経営者自らがこの解雇理由は正当なものだと立証する責任を負うためです。
例えば、あなたが仮に殺人事件を起こしてしまい、警察に取り調べを受けるとしましょう。
警察から取り調べを受ける際には「黙秘権」というものが存在しており、自分に不利になる可能性のあることを喋らなくていいよという権利が与えられます。
また、一般的な民事訴訟でも被告人が自分に不利になる証拠を裁判所に出す必要性はありません。裁判で不利になるようなことは黙っていても良いのです。
しかし、正社員を解雇した経営者には黙秘権はありませんし、不利な証言を避けることは難しい状態となります。
経営者であるあなたが解雇の理由や妥当性を立証して裁判官を納得させなければあなたの負けです。
黙秘して「解雇の理由は特にない」などという状態を作れば「解雇に足る正当な理由は存在しなかった」として経営者のあなたは裁判に負けるのです。
反対に「解雇の理由は勤務態度が悪かったからだ」など解雇理由を明示して戦うことになる場合も、その解雇理由が「客観的に見て合理的かつ、社会通念上相当だとする根拠を示してください。出来なければ経営者の負けです」となります。
自分が不利になるような理由でも話さなければ敗北し、話した内容が裁判官の常識基準に満たなければ負けます。
裁判に負ければ、解雇したかった問題社員は職場に何の問題もなく帰ってきます。
しかも高額のバックペイという働けなかった期間の賃金も全て支払うことになります。
例えば月給30万円の社員と3年間裁判で争ったあげく、裁判に負けて解雇無効となれば36ヵ月×30万円=1,080万円の支払いを経営者は裁判所に命じられるということです。
感情に任せた強行解雇とはこんなにも割の合わないものなのです。
だからこそどの企業も退職届を書いてもらおうと躍起になります。
30日以上前に解雇予告
解雇の手続きとして、必ず解雇する30日以上前に解雇予告をする必要性があります。
なぜなら、労働者が次の仕事を見つける必要性があるためです。
解雇される前日にいきなり通知されれば、労働者の生活は立ちいかなくなる可能性が高くなります。
労働者を保護する目的で30日以上前に解雇予告する必要性があります。
注意点としては、ジャスト30日前に解雇予告することを徹底することです。
解雇が30日よりも前の段階で通告されれば「なぜそんなに早く決断をしたのか。考える時間はあったはずだ」など、思わぬ反論を招くためです。
30日以上前という部分だけ読めば法律よりも早く対処したと考えがちですが、退職日からあまりにも遠い2か月前に解雇予告をするのは避けましょう。
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解雇には種類が3つある
「解雇にはどのような種類があるのだろうか」と気になりませんか。
解雇には以下の3つの種類があります。
- 普通解雇
- 整理解雇
- 懲戒解雇
それぞれについて解説します。
普通解雇
一般的には問題社員に対応するときには、以下のようなケースが想定されます。
- 業務成績があまりにも悪く、複数回改善指導を行ったが良くならなかった
- うつ病やケガなどの健康問題によって、仕事に復帰できないとき
単純に能力不足や遅刻常習者、精神疾患などで勤務継続に耐えないだろうと推測されるものなど、パターンは複数あります。
そこで普通解雇で解雇しようと考えるのですが、裁判所に求められた時にその事実を証明するだけに足る理由が必要となります。
例えば、業務成績が悪いならば、改善の指導を何回行ったのか、人事異動は出来なかったのかなどです。
会社側は労働者が会社で仕事を続けられるようにどれだけ努力をしたかの痕跡を証拠として提出していく必要性があります。
普通解雇のイメージとしては教師による不良高校生への指導に近いです。
高校生が素行不良や暴力などの問題を起こしても日本の高校はあまり退学にはしません。
不良の生徒が殺人事件や傷害事件を起こして少年院などに送致されて初めて退学処分を検討するという対応です。
「経営者がそこまでするのか」という感覚もあるかも知れませんが、普通解雇は日本の不良高校生に対する教師の対応をイメージしてください。
かなり根気が要りますし、骨が折れます。
整理解雇
普通解雇とは異なり、実は認められやすいパターンが整理解雇です。
なぜなら、整理解雇は以下のように4つの要件が明確に定められているためです。
- 整理解雇に関して客観的で合理的な理由があること
- 解雇を回避するために最大限の努力をしたこと
- 解雇の対象となる人選基準などが合理的なこと
- 労使間においてしっかりと話し合いを行ったこと(労組の同意までは必要なく話し合いが重要)
例えば、関西にある工場や本社、営業所を東北に移転させるといったパターンがあります。
事業所ごと移転するため、余剰人員が生じることや、職種の消滅、転勤を拒否などされれば解雇するしかありません。
また、経営不振なども理由となります。
ただし、労働者が出来るだけ辞めなくても済むように異動の打診や、退職金優遇措置など出来る限りのことをするという対応が前提となります。
懲戒解雇
最も難しい解雇が、懲戒解雇です。
懲戒解雇は懲戒解雇をされた労働者が他の会社に就職しにくくなるなど、大きなダメージを被るためです。
例えば、社員が悪質な違法行為や、就業規則違反をしたときなどに適用されます。
ただし、解雇するためには重大な労働者側過失が必要となります。
一般的に問題になることは痴漢や傷害事件、覚せい剤などの薬物使用発覚など刑事事件を社員が引き起こしたときでしょう。
無断欠勤の社員が実は警察署に痴漢などで逮捕されて拘留されていたというケースも多いため、真面目な社員がいきなり無断欠勤した場合、身元保証人となっている家族や通勤ルートにある警察署に連絡するなどしてみましょう。
痴漢で逮捕されている場合、社員の家族が「主人が帰ってこないのです!会社にいませんか」と電話がかかってきて発覚するケースがほとんどです。警察は会社や家族に連絡する義務を負っておらず、選任された国選弁護人が「この警察署にいま拘留されています」と家族に連絡してくれます。
一般的な感覚からすれば「警察に捕まるなんてとんでもない!解雇だ!」となるかも知れませんが、逮捕拘留されただけでは解雇は難しいです。仮に起訴まで行ってしまっていても、判決が出るまでの間、社員は「推定無罪」という状態です。
日本の刑事事件における起訴後の有罪率は99.9%と言われていますが、社員が逮捕され起訴されたからといって100%有罪になるとは限りません。
1年程度の長い裁判が終わって有罪判決を受けて初めて解雇を検討することになります。
社員が逮捕された後の対応策として、親族と話し合いをするという形または弁護士に依頼して本人の意思確認を取るという方法があります。
逮捕された社員と面会できる権限を保有しているのは社員本人の親族と弁護士のみです。
逮捕されているからと言って本人から退職届を貰うことは無理ではありません。
面会可能な親族または弁護士に「退職届を書いてもらえませんか。もしも有罪判決となれば当然、懲戒解雇を検討しなければなりません。しかし、いまの段階であれば自己都合退職でも退職金の計算区分は会社都合扱いとし、特別に300万円を上乗せして退職してもらうことも可能なのです。裁判中に有給が切れてしまうと給与が出ないので、生活費なども困ってしまうと思いますので、いまのうちに退職金を多めに貰った方が良いのではないでしょうか」と伝えて退職願いを拘置所で書いてもらい、代理人を通して受け取るという方法があります。
特に社員の逮捕は新聞やニュースなどで「〇〇株式会社の社員、痴漢で逮捕!」など大きな見出しで書かれることもあります。
理想を言えば、懲戒解雇うんぬん以前に1秒でも早く退職の話を取り付け、新聞社に抗議できる状態を作ることです。
「その社員はもう退職しており、わが社とは無関係であり、報道は不当です」と抗議できる状態を作りましょう。
退職していれば関係者ではないため、マスコミから電話やメールが大量に来るという事態を避けられます。
解雇や退職勧奨をする前に必ず就業規則を見直す
解雇や退職勧奨をする前に、必ず就業規則を見直すようにしてください。
なぜなら、就業規則に書かれていない処分を下すことはできないためです。
社員を解雇する場合、就業規則の特定の部分に違反をしたから解雇という処分を下したという根拠が必要となります。
必ず就業規則は見直しをかけ、様々なケースに対応できるようにしておきましょう。
また、労基署への提出時の注意ですが、必ず就業規則をコピーし、控えに労働基準監督署の受領印をもらうようにして下さい。
親切な労働基準監督官であればコピーをして捺印してくれますが、そうでない場合は控えへの押印が貰えないため、就業規則の写しが手元にない状態になってしまいます。
問題社員の特徴とクビにしたい社員の共通点
「問題社員にはどのような特徴があるのだろうか」と気になりませんか。
問題社員には以下のような特徴があります。
- 仕事をサボる
- 遅刻などを頻繁にする
- 他の社員の成果を横取りするフリーライダー社員
- 労働基準法の話を持ち出してくる
- やたらと解雇しろとけしかけてくる
- 能力不足
それぞれについて解説します。
仕事をサボる
問題社員の特徴として、仕事をサボるという特徴があります。
なぜなら、仕事をまともにすると損をすると思っているためです。
仕事をしているフリをするのが上手いので、なかなか見抜けないこともあります。
また、通常は10分で終わるような仕事に1時間かけるなど余計なことをしています。
周囲の社員のモチベーションを根こそぎ奪う存在です。
遅刻などを頻繁にする
問題社員の特徴として、遅刻などを頻繁にするという特徴があります。
仕事に時間通りに来る癖がそもそもついていないのでしょう。
放置すると周囲も遅刻に寛容的なムードになる可能性があります。
遅刻に対しては始末書や改善指導を都度行い、放置しないようにして下さい。
他の社員の成果を横取りするフリーライダー社員
自分は仕事をしないのに他の社員の成果を横取りしてしまうフリーライダー社員という困った存在があります。
フリーライダー社員に対しては、普段から仕事に身を入れなさいという注意をしてください。
本人は他人の仕事の成果を横取りして仕事をした気分になっているためです。
仕事とは自分で手を動かして成果を出すものだという口頭注意をしっかりと行い、このままでは会社はあなたに厳しい処分をしなければならなくなると伝えてください。
労働基準法の話を持ち出してくる
問題社員の特徴として、労働基準法の話を持ち出してくるという特徴があります。
法律に詳しいことはある意味正しいことですが会社経営上は厄介なものです。
対策として、そもそも法律の知識がある従業員を採用しないことが重要です。
法務や人事総務、経理や経営企画部などの幹部候補職種の社員が法律に詳しいことは歓迎ですが、営業や製造現場などの現場職種に法律の知識があることはトラブルの種になります。
面接時に出来るだけ法律に詳しい人は落とすようにするなど、工夫が必要です。
また、実際問題として法的知識のある応募者は意図的に落とすという企業も実在しているため、悪いことでも何でもありません。
企業は解雇を自由に行えませんが、どのような人を採用するのかについては自由が認められています。
例えば本社部門以外の社員を採用する際に筆記テストを実施するという方法があります。
一般常識や計算問題の中に、労働基準法に関する知識を混ぜておきましょう。
労働基準法に関する知識としては以下のような設問を何問か入れておきます。
- 残業をした場合の割増率は()倍である。()に数値を埋めよ。
- 所定労働時間は1日()時間までである。()に数値を埋めよ。
- パートタイム労働者への社会保険の適用は、労働者の労働時間が正社員の()以上であるときに適用される。()を埋めよ。
上記のような労働法や社会保険の問題を混ぜたテストで労働基準法に関する部分だけは別枠で採点して点数の高い応募者は不採用としましょう。
悪い点を取ったら不採用という採用方式ではなく、良い点を取ったら不採用ということです。
採用時のテストは人事上の機密となるため、応募者や内定者に対して、テスト結果を知らせる必要性がなくふるい分け材料となります。
やたらと解雇しろとけしかけてくる
問題社員というよりもここまでくると完全なモンスター社員ですが、最も厄介なパターンとして、解雇しろとけしかけてくる問題社員には注意が必要です。
なぜなら、解雇されれば勝利だという認識で解雇を挑発的にけしかけてくるためです。
場合によっては自分から辞めると言い出したにも関わらず「離職票では会社都合にしてくれ!懲戒解雇にしてくれ!」などと言い出します。
ここで重要なポイントは、自分から辞めたいと言い出した以上は絶対に退職届を書いてもらい自己都合退職での退職をしてもらうように会社は意見を堅持することです。
退職届さえあれば経営者のあなたの勝利です。
離職票に懲戒解雇(重責解雇)と書いてしまうと、ハローワークに「退職理由がおかしい!」と抗議される可能性が高いです。
抗議を受けたハローワークが労働局に相談し、労働局が企業に呼び出しをかけてきます。
労働局から呼び出しを受けたタイミングとほぼ同時におそらくユニオンが「不当解雇に関する団体交渉に応じろ!」と連絡してきます。
そうなると労働局の呼び出しを受けて慌てている状態の中でユニオンの団体交渉が起こってしまいます。
離職票の離職理由は出来る限り、自己都合退職にしましょう。
ただし、例外的に自己都合退職を会社都合退職にするという事態があります。
例えば社員が重度のうつ病に罹患してしまい、休職させてあげられないケースなどです。
従業員の健康管理も実は経営者の安全配慮義務になっているため、休職させてあげた方が良いのですが、前例や就業規則で休職規定が存在しない場合もあります。
また、精神疾患は仕事で罹患したのか、本人のプライベートな事情で罹患したのかを判定することが本当に難しいです。
その場合は、本人と本人の親族を呼び出して話し合いをしましょう。
うつ病に罹患している方が所帯を持っている場合は、配偶者の方で問題ありません。
「休職は難しいのですが、次の職場が見つかるまでの生活を保障する意味で、退職金を特別に上乗せします。また、すぐに失業保険を受け取れるように自己都合退職ではなく会社都合退職で退職してもらおうと思います」など、折り合いをつけましょう。
このように会社と労働者どっちが悪いのかグレーな場合は、退職理由を優遇する意味で会社都合扱いにすることも考えましょう。
ですから、明らかに会社に有害なモンスター社員に会社都合退職で優遇することはしなくても良いです。
また、注意して欲しい点として、会社都合退職を出すとハローワーク主催の就活イベントへの参加対象企業から排除されることや、若者応援ハローワークへ求人依頼するための条件である優良企業基準(会社都合離職者過去3年間0名など)に引っかかることがあります。
お金の面では、会社都合離職者を出した企業には、雇用助成金などの補助金がほとんど打ち切られます。
実務的には高卒採用がハローワーク頼りにならざるを得ない(ハローワークに求人を出さないと高卒新卒を学校など公的機関から直接採用できない)ため、高卒採用するときにハローワークから印象が悪いと高卒採用がやりづらくなります。
しかし、大卒採用がメインならリクナビやマイナビなど民間の人材紹介会社がメインとなるため実務上弊害が少ないです。
自社の状況を確認してから会社都合退職を選択しましょう。
能力不足
モンスター社員の特徴として、能力不足があります。
本人は能力があるつもりなのですが、常にミスを起こして会社にダメージを与えます。
例えば、本人は真っ当に仕事をしているつもりなのですが、取引先を怒らせるようなミスをしても謝罪しないといったことです。
自分のミスを素直に認められない、また取引先を怒らせるような致命的なミスを連発するといった特徴がモンスター社員にはあります。
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モンスター社員と問題社員の正しい辞めさせ方
「モンスター社員と問題社員はどのようにすれば辞めさせられるのかな」と気になりませんか。
結論から言えば最も安い金額で退職届を本人からもらえるように考えてください。
なぜなら、退職届さえ取れば経営者の勝利とも言うべき状態となっているためです。
モンスター社員と問題社員の正しい辞めさせ方として、以下の方法があります。
- 腹を割って話し合う
- 退職金を優遇して退職してもらう
- 人事異動してもらう
- 思い切って解雇を敢行する
それぞれについて解説します。
腹を割って話し合う
最初に試して欲しい方法として、経営者として社員と腹を割って話し合うという方法です。
もしも「法的な部分が分からないから、弁護士に同席して欲しい」という場合はそれでも問題ありません。
重要なことは経営者自身の想いを伝えて紛争化する前にモンスター社員と決着をつける事なのです。
以下のように問題社員と腹を割って話してみてください。
「君の言っている様々な労働問題に関して経営サイドとして指摘されている法律が守れていない部分はもちろんあるのかもしれない。そうした指摘があり改善指摘を会社の発展を思ってやってくれているなら大いに検討したい。しかし、会社のことを君が思っておらず、実際のところ心の中で労働問題化させて何らかの金銭的な部分での決着をしたいということであれば、退職金等優遇を考えているため、退職願いを書いてもらえないか。もし会社の発展を心から願っているのであれば歩み寄ることは検討できる。もし内心、本当は辞めたいし会社の発展を考えていないのであればこれは会社に対するクレームと考える。退職届を書いて欲しい」と経営者自ら引導を渡すようにしましょう。
退職勧奨そのものは別に違法行為でも何でもなく、経営者サイドの権利です。
率直に辞めて欲しいと伝えることも大切です。
話し合いがまとまったら絶対に退職届だけは貰ってください。退職届の紙1枚が様々なトラブルから経営者を解放します。
退職金を優遇して退職してもらう
モンスター社員や問題社員に対しては、退職金を優遇して退職してもらうという方法があります。
なぜなら、結局のところモンスター社員が狙っているのはお金だからです。
労働基準法や労働安全衛生法は本当に緻密な法律となっており、完璧に守れる会社はありません。日本を代表するような大企業でも軽微な違反は必ずしています。
そうした細かな法律違反をうまく理屈をつけてモンスター社員は現金に換えたいと考えています。
ですから、相手の要求を満たしてあげればまずトラブルは起こりません。
何となく損したような気分になるかも知れませんが、多くの企業では金銭的解決をしているのが実情です。
人事異動してもらう
モンスター社員への対応策として、人事異動をするという方法があります。
なぜなら、解雇をするほどでもない人材であれば、一旦は他の事業所に異動させることで解決する可能性があるためです。
例えばモンスター社員の素行に問題があるのであれば、それを指導できるような強い社員が多い部署に異動させることで解決できる可能性があります。
モンスター社員は強面で気の強い社員が多い傾向にありますが、自分よりも強面で気の強い社員が大量にいる現場に行くと大人しくなる傾向にあります。
そのうち在籍することが難しくなって自主退職を選ぶ可能性もあるため、人事異動も有効な手段です。
証拠を積み重ねて解雇を敢行する
モンスター社員への対処法として、証拠を積み重ねて解雇を敢行するという方法があります。
安易に感情に任せて「お前はクビだ!」と言うのではなく「あなたはこういうミスをして指導をしても改善しなかった。こんなに処分も出している。あなたのせいでわが社はこんなにも売り上げが下がった。だからクビだ」と伝えるということです。
例えばモンスター社員が遅刻を繰り返す、無断欠勤を繰り返す、言葉遣いが乱暴など、経営者が「問題だ」と感じている行動すべてに始末書を書いてもらいましょう。
始末書を書かせ「二度とこのようなことはするな!改善しろ!こんなことを繰り返されたら本当にうちの会社は潰れてしまうんだ!」と強い注意と指導を行いそれも記録に取ります。
そして、解雇に至る前に就業規則上の罰則を段階的に与えていきます。
戒告、譴責、減給処分、出席停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇という段階を踏んで解雇に踏み切りましょう。
重要なことは解雇ありきという前提で解雇を行ったのではなく、会社として前向きに社員が在籍できるように改善指導を繰り返したが、どうしようもなかったのだと裁判官に思ってもらえるようにすることです。
また、会社としても手を尽くして解雇をしたのであれば、他の社員からの反発も少ないはずです。
既存社員と裁判官が納得できるような状態で解雇を敢行し、ダメージを最小限に抑えて解雇するようにしましょう。
【要注意な事例】安易な解雇で起こった労働トラブル
「安易な解雇をするとどのような事態になるの」と気になりませんか。
安易な解雇をすると、以下のような事件が起こります。
- 労働審判
- ユニオンとの闘い(団体交渉)
- 【最悪のケース】裁判と同時にユニオンとも闘争することになる
それぞれについて解説します。
労働審判
社労士資格を持った試用期間中の正社員を社長が「飲み会での発言が気に入らない」という理由で解雇してしまったケースでは、労働審判が解雇4週間後に申し立てられてきて、3か月分約110万円支払う(訴額は140万円)といった決着になったことがあります。
このケースではまず社労士という労働法の知識を持った従業員を安易に雇い入れたこと、そして飲み会での発言というどう考えても業務時間ではないシチュエーションでの発言で解雇してしまうという軽率さが紛争の原因です。
幸い、労働審判の3ヵ月で集結しましたが、雇用形態が正社員だったため、民事訴訟を起こされて1年以上にわたる長い戦いに巻き込まれた可能性もあります。
ユニオンとの闘い(団体交渉)
老舗企業でエース社員が大阪から東京へ異動するため、エース社員が戻ってくるまでの間に契約社員を1年契約(ただし契約更新は半年単位)で雇用しました。
しかし、結局異動がなくなってしまったため、6か月分(120万円)の金銭で納得して自己都合退職してくれないか?と打診したところユニオンに加入されてしまいました。
最終的には賃金240万円+紛争解決金60万円=300万円近いお金を払うことになってしまいました。期間も団体交渉で3か月近くかかり業務に集中することは難しい状況となりました。
【最悪のケース】裁判と同時にユニオンとも闘争することになる
最悪なケースとして、裁判と同時並行でユニオンと闘争するというケースがあります。
団体交渉と裁判が平行するため、団体交渉でうっかりと会社側が話してしまった言葉が裁判所に答弁書として提出されて苦しい戦いになります。
団体交渉は裁判のように自分に不利なことを話さないという戦法が通用しないためです。
つまり、絶対に何らかの言葉を発さなければならない状況に追い込まれ、裁判所にその発言が提出されることによって自らの手で自らの首を絞める過酷な状況になるということです。
ユニオンから提出を求められた資料を提出しない、ユニオンが求めた回答に正当に回答しないという事態を起こせば不当労働行為として都道府県労働委員会から救済命令が降りることになります。
救済命令が降りるとペナルティーとして公共事業への入札停止など、行政処分が即座に下されます。
企業が違法行為を行った状態になるため、官報や都道府県のホームページへの実名掲載などが起こります。
ここで気を付けて欲しいのが、ライバル事業者に根こそぎ取引を持っていかれる可能性がある点です。
ライバル事業者は「あんな行政命令を受けている危険な企業よりもうちに発注した方がいいですよ!うちはコンプライアンス違反もしておらず取引しても安全ですよ!うちに鞍替えしてください!」と吹聴して既存取引先を奪っていく傾向にあります。
また、行政処分を受けたことによって「なんで行政命令を受けたんだ!違法行為をしたらコンプライアンス違反だろう。なぜ取引先にすぐに連絡しないんだ。どうなってるんだ!」と取引先の社員や社長から叱責されることもあり得ます。
労働問題をこじらせると、売上が維持できるのかどうか怪しい状態になることも少なくないのです。
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最悪のケースであるユニオンと裁判の同時並行に対処する方法
最悪のケースであるユニオンとの裁判の同時並行に対処する方法として、以下の手順があります。
- 論点が出尽くした段階で、和解交渉を行う(裁判開始後半年目安)
- 和解交渉のテーブルにユニオンを合流させるため、相手方弁護士に「労働組合も和解交渉に合流してもらえないだろうか」と打診する
- 和解交渉のテーブルに経営者側弁護士、労働者側弁護士、ユニオンの委員長(トップ)に出てきてもらう
- ユニオンと裁判所の同時並行では話がまとまらない。裁判所にユニオンを合流させて和解を同時に行えば全ての紛争が終わる
要点は労働者側弁護士もユニオンも、同じ原告の意向を受けて動いているという点にあります。
原告が納得する形で和解できれば両方と話をつけることが可能となります。
労働トラブル再発を防ぐためには、経験を積み、専門家と相談し合うことが大事
労働トラブル再発を防ぐためには、経験を積み、専門家と相談し合うことが大事です。
なぜなら、労働問題を予防することなどということは絶対に不可能なためです。
初期消火で対応して労働トラブルを解決しつつ、良い人材を採用して会社を強化していくことが大切なのです。
労働トラブルを初期消火する経験を積んでいくうちに「これは危険だな!」という直感が働くようになります。
危険信号を察知したら顧問弁護士に相談するなど対処する力が身につきます。
大切なことは、社員に関わる事項で危険信号を察知したら感情的にならず深呼吸して、軽率な判断を避けることです。
感情的に行った人事処遇は確実に身を滅ぼします。
解雇の決断をする前に弁護士など法的知識のある人に話を聞いてから決断するようにして下さい。