M&Aと労働安全衛生管理問題
M&Aの法務デューデリジェンスにおいては、「M&Aと労働安全衛生管理問題」についても検討をする必要があります。
特に近時、少子高齢化により、労働人口が減少し、職場労働環境の悪化や長時間労働が常態化しているところもあり、他方、労働条件の健全化の社会の流れも大きく、労働安全衛生管理に問題がある場合、大きな影響を受ける可能性があります。
まず、労働安全衛生法上、各事業場における総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者及び産業医の選任が必要となっています。
詳細には、下記のとおりの基準に基づきますので、全ての事業所が全て総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者及び産業医の選任が必要というわけではありません。
(総括安全衛生管理者を選任すべき事業場)
第二条 労働安全衛生法(以下「法」という。)第十条第一項の政令で定める規模の事業場は、次の各号に掲げる業種の区分に応じ、常時当該各号に掲げる数以上の労働者を使用する事業場とする。 一 林業、鉱業、建設業、運送業及び清掃業 百人 二 製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゆう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゆう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業 三百人 三 その他の業種 千人 (安全管理者を選任すべき事業場) 第三条 法第十一条第一項の政令で定める業種及び規模の事業場は、前条第一号又は第二号に掲げる業種の事業場で、常時五十人以上の労働者を使用するものとする。 (衛生管理者を選任すべき事業場) 第四条 法第十二条第一項の政令で定める規模の事業場は、常時五十人以上の労働者を使用する事業場とする。 (産業医を選任すべき事業場) 第五条 法第十三条第一項の政令で定める規模の事業場は、常時五十人以上の労働者を使用する事業場とする。 |
また、安全委員会及び衛生委員会又は安全衛生委員会を適切に設置する必要もあります。
こちらも、下記のとおりの基準に基づきますので、全ての事業所が全て安全委員会及び衛生委員会又は安全衛生委員会を設置する必要があるというわけではありません。
(安全委員会を設けるべき事業場)
第八条 法第十七条第一項の政令で定める業種及び規模の事業場は、次の各号に掲げる業種の区分に応じ、常時当該各号に掲げる数以上の労働者を使用する事業場とする。 一 林業、鉱業、建設業、製造業のうち木材・木製品製造業、化学工業、鉄鋼業、金属製品製造業及び輸送用機械器具製造業、運送業のうち道路貨物運送業及び港湾運送業、自動車整備業、機械修理業並びに清掃業 五十人 二 第二条第一号及び第二号に掲げる業種(前号に掲げる業種を除く。) 百人 (衛生委員会を設けるべき事業場) 第九条 法第十八条第一項の政令で定める規模の事業場は、常時五十人以上の労働者を使用する事業場とする。 |
これらの、総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者及び産業医の選任を怠ったり、安全委員会及び衛生委員会又は安全衛生委員会の設置を怠り、その結果、大きな労働災害を生じさせたような場合には、その会社の社会的責任・経済的負担は大きなものとなるものと思われますので、法務デューデリジェンスにおいては、特に留意する必要があります。
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