未払賃金・退職金等の偶発債務性について
対象会社に未払賃金・退職金等が存在するからと言って、直ちに、従業員が、対象会社に対して、未払賃金・退職金等請求を行うわけではなく、必ず、対象会社に損害が発生するわけではない。
すなわち、従業員が、対象会社に対して、未払賃金・退職金等の請求を行うか否かは、その従業員次第であり、対象会社との関係などにも影響されるところであるし、従業員が対象会社に未払賃金・退職金等の請求を行った場合、一般的には、対象会社に居づらくなることから、多くの場合は、対象会社に在職中は、未払賃金・退職金等の請求を行うことはなく、対象会社を退職したのち、対象会社に対して、未払賃金・退職金等の請求を行う。
事業承継M&Aに関しては、事業承継M&Aに際して退職した元従業員のみならず、事業承継M&Aの相当以前に退職した元従業員が、対象会社が事業承継M&Aを行ってオーナーが変更になったことを知って、対象会社に対して、未払賃金・退職金等の請求を行うことも多い。
なお、未払賃金の請求権の時効は2年であることから、2年以上前に退職した元従業員は、未払賃金の請求を行うことはできず、退職してしばらく経っている元従業員については、未払賃金は少額になってしまっているであろうから、未払賃金の請求を行うケースはそれほど多くないものと思われる。
ただ、近時、報道によると、未払賃金請求権の時効が2年から5年に延長する法改正が検討されているとのことであり、この点は非常に注意が必要であり、この法改正が実現した場合、事業承継M&Aに対する大きな障害となることが危惧されている。
なお、未払退職金の時効は5年であることから、対象会社に未払退職金が存在している場合は、特に留意が必要である。
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