元役員・元従業員が大切な情報やノウハウを持ち出し、会社にとって不利益となる事業を行っている……。こんなトラブルに悩まされるケースは、顧客情報やノウハウの電子管理化に後押しされ、近年ますます増えています。
顧客を奪い、会社が苦心惨憺の末に蓄積したスキルを流用する退職者に対しては、競業行為をやめさせることを第一に厳正な措置をとらなくてはなりません。ただ、肝心の措置の方法については、どのような根拠で責任追及できるのか検討する必要があります。
本記事では、不正競争行為あるいは競業避止義務違反に該当する要件を中心に、実務家の目線で対処の基礎知識を網羅的に解説します。
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元従業員・退職者の競業行為・営業秘密侵害への対処の種類
退職済の従業員・役員による競業行為に対しては、その差し止めと損害賠償請求を早急に開始しなければなりません。ここで検討したいのは、責任追及の根拠です。
まず確認したいのは、①不正競争行為として措置できるかどうかです。該当しない場合は、退職者との合意に基づき、②競業避止義務違反として対処します。①・②のどちらでも対処できそうにない場合は、③損害賠償請求で行為をやめるよう圧力をかける方法を採ります。
類似表記・信用毀損・営業秘密の侵害等が確認できる場合
→法律上の「不正競争行為」であるとして、差止請求(第3条)と損害賠償請求(法4条)を中心に厳正に対処できます。会社側が捜査機関に届け出たなら、退職者に対する刑事罰もあり得ます。
競業避止の合意があった場合
→競業避止義務違反として、任意交渉や訴訟手続により競業行為の差し止めと損害賠償を求めます。
競業避止の合意がない場合
→少なくとも会社に損害があれば、競業行為と相当因果関係のある部分において補償を求められます。
元従業員・退職者の競業行為・営業秘密侵害を「不正競争行為」に問える基準
不正競争防止法第2条1項では、概ね10種類に分類できる「不正競争行為」が定められています。中小企業における退職者の競業行為に関するトラブルでは、以下いずれかの行為を指摘して措置するケースが多数派です。
他人の商品形態を模倣した商品の提供(3号)
…形態を真似た商品の譲渡、貸し渡し、展示、輸出、輸入
※周知性を獲得する前からの使用は除外
信用毀損行為(21号)
…競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知、または流布
営業秘密の侵害・限定提供データの不正取得(4号~16号)
…企業の秘密を不正に取得する、あるいは正当に取得したものを開示する、等
以下では、最も事例として多い「営業秘密の侵害」に絞り、侵害行為の判断基準と類型を押さえます。
営業秘密とは
営業秘密の侵害行為として責任追及するには、退職者に持ち出された情報が法第2条6項の定義に該当するか見極めなくてはなりません。
条文では、以下のように規定されています。
“この法律において「営業秘密」とは、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう。”
紹介した条文にある営業秘密とは、より分かりやすく①秘密管理性・②有用性・③非公知性の3要素を満たしたものだと言い換えられます。詳しくは経産省の「営業秘密管理指針」(平成31年1月改訂版)において、下記のように説明されます。
①秘密管理性
営業秘密の「秘密管理性」とは、その情報を会社の秘密であると従業員等に対して明確にされていることを指します。簡単に言えば、少なくとも資料に「マル秘」「社外秘」等と表記されており、誰が見ても一目で企業秘密だと分かるような措置が施されていなくてはなりません。
なお、具体的に必要な秘密管理措置の内容と程度は、その企業の規模と業態、従業員それぞれの職務、情報自体の性質等によって異なります。これら総合的事情から勘案して措置が十分だったかどうか、個別の判断は欠かせません。
②有用性
営業秘密の「有用性」とは、客観的に見て会社の事業活動にとって有用であると判断できることを意味します。
例えば、ある商品の製造過程で使われる技術を考えてみましょう。その技術が会社独自に開発したもので、消費者にとっても魅力的であり、購買行動の決定打になっているとすれば、これは事業活動にとって有用と考えるべきです。一方で、脱税や事故といった公序良俗に反する情報については、有用性の要件を満たさないとして除外されます。
【一例】有用性があると認められるもの
- 設計図、製法、製造ノウハウ
- 顧客名簿、仕入先リスト
- 販売マニュアル
③非公知性
営業秘密の「非公知性」とは、一般には知られていないか、あるいは容易に知ることが出来ない性質を意味します。
ポイントは、全くの未公開でなくとも本要件は満たし得る点です。秘密に管理する者の元でない限り、合理的な努力の範囲で知り得るものではないと解釈できれば、非公知性の要件は満たせます。少なくとも、特許法第29条における「公然知られた発明」の解釈のように厳格ではありません。
【一例】非公知性が認められるもの
- 第三者が開発・保有しているが、秘密として管理されているもの
- 一般に流通しない刊行物(外国や国内技術者向けのもの)に掲載されているもの
営業秘密として「限定提供データ」も保護対象に(平成30年改正以降)
不正競争防止法は平成30年に改正され、新たに「限定提供データ」も保護対象になりました(第2条1項11号~16号/新設)。ごく簡単に言えば、企業秘密とされるもののうち、パソコンその他電子機器上にあるものも不正競争行為の対象になると明確化されたのです。
【限定提供データの定義】※改正法第2条7項
- 技術上または営業上の情報である
- 業として特定の者に提供する情報である
- 電磁的方法により、相当量蓄積および管理されている
限定提供データの流用を指摘して責任追及する時に注意したいのは、この後説明する「不正取得」または「不正開示」にあたるケースです。この場合、相手が善意無過失だと責任を免れられるため(改正法第19条8号イ)、その退職者が「不正の介在があると知っていた」と立証・主張しなくてはなりません。
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「営業秘密の侵害」の類型
不正競争行為となる「営業秘密の侵害」を指摘する場合は、具体的に以下のどの行為類型に当てはまるのか指摘しなければなりません。
なお、指摘した営業秘密等の不正取得・不正使用・不正開示の一部には、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、もしくは両方の刑事罰が科せられることもあります(法第21条1項1号~7号)。
不正取得型
営業秘密侵害の第1の類型は、法第2条1項4号~6号で定められる「不正取得」にかかるものです。退職間際に許可制のデータを持ち出すような行為は、その退職者を通じて第三者が利用したにせよ、以下のように規制対象となります。
【4号該当行為】
- 窃取、詐欺、強迫その他の不正の手段により営業秘密を取得する行為(※不正取得行為)
- 不正取得行為により取得した営業秘密を、使用もしくは開示する行為
【5号該当行為】
- 不正取得行為の介在を知りながら、使用もしくは開示する行為
- 不正取得行為の介在を重過失により知らないまま、取得、使用、もしくは開示する行為
【6号該当行為】
- 取得後に不正取得行為の介在を知った上で、使用もしくは開示する行為
- 取得後に不正取得行為の介在を重過失により知らないまま、取得、使用、もしくは開示する行為
【参考】プロテクト破りも規制対象に(平成30年改正以降)
パソコン等で管理される企業秘密は、保護処理を施してコピーや転送に制限をかけておくのが一般化しています。この保護処理を破る行為、いわゆる「プロテクト破り」は、平成30年の法改正で規制行為の対象となりました(17号該当行為)。なお、プロテクト解除ツールを提供した者も、同じように責任を問われます(18号該当行為)。
不正開示型
たとえ正当な方法で営業秘密を取得したとしても、それを理由に競業行為を言い逃れることは不可能です。下記のように、法第2条1項7号~9号で「不正開示」も規制されるからです。
【7号該当行為】※不正開示行為
保有者から示された営業秘密を、不正の利益を得る目的で使用または開示する行為
保有者から示された営業秘密を、保有者に損害を与える目的で使用または開示する行為
【8号該当行為】
不正開示行為であることを知りながら、取得、使用、もしくは開示する行為
不正開示行為の介在を知りながら、取得、使用、もしくは開示する行為
不正開示行為の介在を重過失により知らないまま、取得、使用、もしくは開示する行為
【9号該当行為】
- 取得後に不正開示行為を知った上で、取得、使用、もしくは開示する行為
- 取得後に不正開示行為の介在を知った上で、取得、使用、もしくは開示する行為
- 取得後に不正開示行為を重過失により知らないまま、取得、使用、もしくは開示する行為
元従業員・退職者の競業行為・営業秘密侵害につき「競業避止義務違反」が成立する基準
元従業員(役員)の競業行為に関するトラブルは、必ずしも不正競争行為として規制されるものとは限りません。法律上の禁止行為として責任追及できない場合には、あらかじめ合意した避止義務に違反しているとして、競業行為をやめさせることになります。
ここで整理しておきたいのは、上記違反行為が成立する要件です。競業行為を巡るトラブルでは、退職者の職業選択の自由まで侵害してはならないとする考え方を踏まえ、次のA・Bの2要件を満たした時とされているのです(奈良地判昭和45年10月23日等)。
- 競業行為の禁止が労働契約に含まれる
- 禁止行為の内容が「合理的範囲」に留まっている
Aに関しては、就業規則や個別の合意があれば足ります。一方、Bの合理性判断に関しては、6つの基準に沿わなくてはなりません(以下参照)。
守るべき企業の利益
第1の要件は、会社側に「避止義務契約などを導入してでも守るべき利益」があることです。何らかの社外秘の情報を持ち出されたケースで言うと、上記利益の解釈は、不正競争防止法上の営業秘密の定義に縛られません。営業秘密に準じるほどの価値を有する情報であれば、どのような形であれ広く認定されています。
【一例】守るべき企業の利益(※秘密管理が難しいもの)
- 独自の営業方法やノウハウ
- 教育成果を上げるために開発した指導方法
- その他、長期間の地道な営業によって獲得した人的関係に基づくもの
【注意】守るべき企業の利益とは認められない場合
一方で、元従業員(もしくは元役員)が業務遂行の過程で習得した属人的スキルは、企業の守るべき利益とは認定されない傾向にあります(東京地判平成24年1月13日・東京高判平成24年6月13日)。企業側の手落ちで「何を秘密とするか」を明確にしていなかった場合も、基本的には同様です(東京地判平成24年3月13日)。
従業員の地位
第2の要件は、その退職者が「競業避止義務を課すことが必要な地位」にあったかどうかです。在職中に守るべき秘密情報に接していれば、それは当然に競業避止義務を課す合理的理由と考えられます。
注意したいのは、単なる地位の高さだけで避止義務の有効性は認められることはない点です。その退職者が情報に触れていたかどうか、実態が重視されるのです(東京地判平成24年1月13日等)。
地域的な限定
第3の要件は、競業避止義務を課すにあたって「地域的な限定」を設けていたかどうかです。場所を制限しなければ、退職者がその経験を活かした転職活動をすることもままならず、結果として職業選択の自由を侵害すると考えられるのです。
ただし、ここで「原則上」としたように、地域限定の有無をもって競業避止義務が無効とみなされるわけではありません(東京地判平成19年4月24日等)。個別の競業避止義務に関しては、事業内容、事業展開地域、禁止行為の範囲との関係性を考慮して、合理性を判断します。
競業避止義務の存続期間
第4の要件は、競業避止義務を有効とする期間です。同じく、元役員や元従業員の再就職活動を考慮し、その職業選択の自由を阻害しないための判断基準として導入されています。
制限に合理性があると認定される期間の目安は、概ね1年以内です。2年以上に及ぶと否定されるケースが増えてきますが、これも業種の特徴や「守るべき企業の利益」の性質から個別に判断されています。
禁止する競業行為の範囲
第5の要件は、取り決めた禁止行為の範囲です。有効性が認められるには、少なくとも「在職中に担当した顧客への営業行為」とのように、活動内容や職種を明確にしなければなりません。その上で、「守るべき企業の利益」との整合性が判断されます。
一般的・抽象的な定め、例えば「同業種への転職は禁じる」(東京地判平成24年1月13日・東京高判平成24年6月13日)といったものは、有効とみなされません。
代償措置
第6の要件は、競業行為の禁止から生じる退職者への影響に配慮し、企業が十分な「代償措置」を講じているかどうかです。分かりやすく言えば、在職中の賃金や役員報酬等で補償しているかどうかが問題となります。
問題は、個別具体的な代償金額の目安です。金額が多少不足していても、有効性が認められたケースは多数あります(東京地判平成20年11月18日等)。一方で、一見厚遇であっても「競業避止条項を定めた前後において、賃金額の差はほとんどない」との理由で否定されているケース(東京地判平成24年3月15日等)の存在も無視できません。
退職前に提示した賃金や退職金が十分だったかどうか、この点は弁護士が分析・判断する必要性が特に高い部分だと言わざるを得ません。
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元従業員・退職者の競業行為・営業秘密侵害が判明した時の対処方法
それでは、退職した役員や従業員の競業行為が判明した場合、一体どのように対処を進めるべきなのでしょうか。第1の目標は、競業をやめさせて損失拡大を食い止めることです。そのためには、ケース別に概ね次のような対応を進めます。
不正競争行為に該当する場合
→緊急性を鑑みて差止請求から開始し、法律に沿って厳正な対処を開始する(Step2~)
競業避止の合意がある場合
→内容証明郵便で警告し、誠実な対応がない場合は差止の仮処分に着手する(Step1~)
上記どちらにも該当しない場合
→内容証明郵便で警告し、誠実な対応がない場合は損害賠償請求を開始する(Step3~)
ここからは、退職者の競業行為への一般的な対処方法につき、順を負って確認しましょう。
Step1.内容証明郵便による警告
競業行為が判明した時は、まず内容証明郵便で警告を発するのがセオリーです。この段階からただちに行為を停止するよう、心理的圧力は十分にかけなくてはなりません。
【内容証明郵便を送付する際の留意事項】
回答期限の明記 | 期限を設け、必ず話し合いのテーブルに着くよう促す |
期限後の対応の明記 | 刑事告訴や損害賠償請求の予定を明記し、圧力をかける |
送付先の検討 | 圧力が十分になるよう、身元保証人や現在の就業先への追加送付を検討する |
なお、「営業秘密」や「限定提供データ」の流用が確認できている場合は、必ずしも警告から始めるべきとは言えない。その悪質さを考慮して、差止請求から開始すべきです。
Step2.競合行為の差し止め
不正競争行為に当たる場合、あるいは警告しても相手から反応がない場合には、裁判上で差止請求を開始します。
この時、最初から通常の訴訟を始めることはほとんどありません。実務上は「差止の仮処分」を申し立てるのが一般的です。訴訟だと判決を得るまでに1年程度かかる可能性があるのに対し、仮処分命令ならせいぜい1か月~2か月程度で差し止めが実現するためです。
なお、仮処分命令を発してもらうには、次の①~②の要件につき申立人側で主張・立証しなくてはなりません。その他、裁判所の命令に従い、担保金提供も要します(民事保全法14条1項)。
【仮処分命令の要件①】被保全権利の存在
…競業を禁止する旨の合意の存在(誓約書等)、その合意が職業選択の自由を侵害していないこと、競業行為が現に行われていること
【仮処分命令の要件②】差し止めの必要性
…その競業行為によって、申立人に損害が発生していること
Step3.損害賠償請求・不当利得返還請求権
競業行為によって損害を被った場合は、行為と相当因果関係にある部分について損害賠償できます。対象になるのは、過去5年程度の間に退職者が得ていた粗利です。
実際には、不正競争行為にあたるような重大事例でない限り、相当額の損害賠償が認められるケースは稀です(最高裁判所平成22年3月25日判決)。経済的損失を贖わせるための他の方法としては、会社の利益を奪ったとして「不当利得返還請求権」を主張する手も考えられます。
多くは、違反金の規定のある誓約書にサインさせる等の再発防止措置が落としどころとなります。
Step4.その他の対応
その他、会社の信用が損なわれる等したケースについては、以下のような対応が必要になる場合もあります。
信用回復措置請求
…退職者に新聞やWebサイト上へ謝罪広告を出させ、会社の信頼性回復に努めさせる対応です(不正競争行為の場合/法第14条)。
刑事責任の追及
…不正競争行為である場合、最終的には刑事告訴する他ありません。その結果として有罪判決が下れば、両罰規定により、退職者本人だけでなく属する法人も罰せられます。
元従業員・退職者の退職に伴う競業行為・営業秘密侵害リスクへの対応方法
経産省が平成29年6月に作成した資料によれば、中途退職者による情報漏洩事案は従業員・役員の合計で全体の約28%にも及んでいます。この中には、競業行為に及ばれて企業の利益が損なわれ、あるいは損失を受けたものも多数あると考えられます。
被害を受けた時、あるいは会社を裏切ると思われる退職予備軍を抱えている時は、下記の対策をもう一度見直して徹底しましょう。
競業避止の合意の徹底
まず心得たいのは、退職前の秘密保持や競業避止に関する合意の徹底です(下記例)。これまで紹介したように、合意の有無だけで万一の時の対処法まで変化します。
【就業規則の規定例】
第●条
従業員は在職中及び退職後▲か月間、会社と競合する他社に就職及び競合する事業を営むことを禁止する。ただし、会社が従業員と個別に競業避止義務について契約を締結した場合には、当該契約によるものとする。 |
【競業避止誓約書の例】※個別合意の場合
貴社を退職するにあたり、退職後1年間、貴社からの許諾がない限り、次の行為をしないことを誓約いたします。
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※「人材を通じた技術流出に関する調査研究報告書」経済産業省委託調査(平成24年度)を元に編集
なお、上記の例文をそのまま流用するだけでは到底足りません。業種、職種、組織図等の事業の性質を踏まえた、個別の書き起こしが不可欠です。
情報管理の徹底
併せて、情報管理体制も見直しも必要です。
言うまでもなく、紙や記録媒体なら金庫やキャビネットへの収納、電子記録ならパスワードの設定……とのように、容易にアクセスできない保管体制は欠かせません。他に基本的な事項として、以下のような措置も講じておくべきです。
- マル秘表記の徹底
- 入退室記録の管理
- 撮影・コピー禁止の明記
- 閲覧履歴が分かる台帳の備え付け
- 組織&個人単位でのアクセス権とログの管理
- 営業秘密の一覧化
以上のような対策は、単に退職に伴う競業リスクを低減させるだけではありません。万一の時に「営業秘密」であると立証できる手段を確保しておく、との意味合いも含みます。
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まとめ
退職者の競業行為を制限できるのは、一定の要件を満たした時のみです。
まずは不正競争防止法第2条1項で規定される規制行為か確認した上で、併せて退職前の合意の有無を振り返りましょう。後者、つまり合意に違反する場合には、職業選択の自由を阻害せず十分な代償措置を講じていたかどうかが、責任追及の可否の分かれ道となります。
問題は、上記判断を社内で行っている間にも、退職者の行為によって損失が拡大し続ける点です。万一の際は弁護士に状況判断を仰ぎ、迅速かつ十分な圧力をかけられる措置を依頼しましょう。