厚生年金保険法第12条5号によると、1日の労働時間が通常の労働者(正社員)の4分の3以上であって、かつ月の所定労働の日数が通常の労働者(正社員)の4分の3以上であれば、パートタイマーであっても厚生年金保険料につき雇用主は徴収する義務があります。
また、健康保険法3条9号によると、1日の労働時間が通常の労働者(正社員)の4分の3以上であって、かつ月の所定労働の日数が通常の労働者(正社員)の4分の3以上であれば、パートタイマーであっても健康保険料につき雇用主は徴収する義務があります。
また、雇用保険法第6条第1号及び第2号によると、雇用保険については31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者であり、かつ1週間の所定労働時間が20時間以上である者は雇用保険料徴収義務が生じます。
また、労働者災害補償保険法第3条第1項によると、労働者を使用する事業については労働者災害補償保険の加入義務が存在します。
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パートタイマーや外国人労働者が社会保険等の加入を拒否する問題
この点、会社によっては、法定の要件を満たす従業員について、従業員本人が固辞すること理由に厚生年金及び健康保険に加入していないということが発生していることが多く存在します。
特に、外国人労働者や、アパレルなどのパートタイマーなどは、自己の手取りを増やそうと、厚生年金や健康保険に加入することを拒否することがあります。
加入要件を満たしているのに、それに反して、厚生年金や健康保険に加入していない場合、従業員個人について保険料納付義務が潜在債務として発生するのみでなく、会社に対しても保険料の会社負担分の納付義務が潜在債務として存在することとなりますので、注意する必要があります。
その他、会社によっては、保険料の算定の基礎を、給与の基本給とし、各種手当を含めていない会社も存在し、そのような場合、保険料の未払が存在することとなり、潜在債務が存在することになりますので、注意する必要があります。
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パートタイマーの社会保険等の加入義務の根拠
正社員については、健康保険、介護保険、雇用保険、労災保険に加入する義務があるのは当然であるが、パートタイマーについては、健康保険、年金保険、雇用保険、労災保険に加入する義務があるか否かについては、健康保険、年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険ごとに要件が異なっており、要件を満たしていない従業員については、必ずしも健康保険、年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険に加入する必要はない点留意する必要がある。
労災保険
労災保険については、労働者を使用する事業者は、すべて労災保険への加入を強制されている点につき留意する必要がある(ただし、国の直営事業及び官公署の事業は適用外、個人経営の農林・畜産・水産の事業で小規模のものは暫定任意適用事業とされる)。
すなわち、1人でも労働者を雇用する事業者は、事業が開始した日に保険関係が成立するとされている(労働者災害補償保険法3条1項、6条)点に留意する必要がある。
雇用保険
雇用保険については、ごく小規模の個人経営の農林、畜産、水産事業を除いた労働者を使用する全事業が適用対象となり、事業が開始された日にその事業について保険関係が成立する。
雇用保険については、適用対象事業を行う事業主に雇用されている者は、原則として被保険者となる(雇用保険法4条1項)が、次のいずれかに該当する者は適用除外とされている(雇用保険法6条)。
①1週間の所定労働時間が20時間未満である者(日雇労働被保険者に該当することとなる者を除く)
②同一の事業主の適用事業に継続して31日以上雇用されることが見込まれない者
③季節的に雇用される者であって、4カ月以内の期間を定めて雇用されるもの又は1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満である者
④学校教育法上の学校の学生又は生徒であって、前3号に掲げる者に準ずるものとして厚生労働省令で定める者
⑤船員であって、漁船(政令で定めるものに限る)に乗り組むため雇用される者(1年を通じて船員として適用事業に雇用される場合を除く)
⑥国、都道府県、市町村その他これらに準ずるものの事業に雇用される者のうち、離職した場合に、他の政令、条例、規則等に基づいて支給を受けるべき諸給与の内容が、求職者給付及び就職促進給付の内容を超えると認められる者であって、厚生労働省令で定める者
厚生年金
厚生年金については、労働者は、適用事業所に使用されるに至った日から被保険者としての資格を取得する(厚生年金保険法13条1項)。
厚生年金の加入が義務付けられる適用事業所とは、①国、地方公共団体又は法人の事業所又は事務所であって、常時従業員を使用する者、②厚生年金法6条1項1号に規定された事業の使用者であって、常時5人以上の従業員を使用する者、及び③船員として船舶所有者に使用される者が乗り組む船舶のいずれかに該当する者をいう。事業者が法人であれば、労働者の人数、事業の内容を問わず、適用事業所となる。
厚生年金の被保険者は、適用事業所に使用される70歳未満の者をいう。また、適用事業所以外の事業所に使用される70歳未満の者についても、厚生労働大臣の認可を受ければ、被保険者となることができる。
ただし、次のいずれかに該当する場合は、適用が除外される。
①臨時に使用される者(船舶所有者の雇用される者を除く)であって、日々雇い入れられる者(ただし、雇用が1カ月を超える場合を除く)もしくは2カ月以内の期間を定めて使用される者(ただし、所定の期間を超えて雇用されるものは除く)
②所在地が一定しない事業所に使用される者
③季節的業務に使用される者(船舶所有者に使用される船員、継続して4カ月を超えて使用されるべき場合を除く)
④臨時的事業の事業所に使用される者(継続して6カ月を超えて使用されるべき場合を除く)
⑤1週間の所定労働時間が同一の事業所に使用される短時間労働者の雇用管理の改善に関する法律2条に規定する通常の労働者(以下この号において「通常の労働者」という)の1週間の所定労働時間の4分の3未満である同条に規定する短時間労働者(以下この号において「短時間労働者」という)又はその1カ月間の所定労働日数が同一の事業所に使用される通常の労働者の1カ月間の所定労働日数の4分の3未満である短時間労働者に該当し、かつ、イからニまでのいずれかの要件に該当するもの
イ.1週間の所定労働時間が20時間未満であること。
ロ.当該事業所に継続して1年以上使用されることが見込まれないこと。
ハ.報酬について、厚生労働省令で定めるところにより算定した額が、8万8,000円未満であること。
ニ.学校教育法規定する高等学校の生徒、同法に規定する大学の学生その他の厚生労働省令で定める者であること。
すなわち、事業承継M&Aの対象会社である中小企業、零細企業において、主として加入の要否が問題となる短時間労働者については、当該事業所の通常の労働者の1週間の所定労働時間及び1カ月の所定労働日数が4分の3以上であれば、厚生年金の加入の対象となる。
また、当該事業所の通常の労働者の1週間の所定労働時間もしくは1カ月の所定労働日数が4分の3未満であったとしても、厚生年金の被保険者501人以上の企業(特定適用事業所)の場合、①所定労働時間が週20時間以上、②1年以上雇用が見込まれる、③賃金の月額が8.8万円以上、④学生でない、という要件を満たす場合は、短時間労働者であっても、厚生年金の加入の対象となる。
ただし、厚生年金の被保険者が500人以下の事業所の場合は、現時点では加入の対象とはなっていないものの、上記①から④の要件を満たす短時間労働者については、労使の合意によって加入の対象となり得る。
医療保険(健康保険)
医療保険(健康保険)については、労働者は、適用事業所に使用されるに至った日から被保険者としての資格を取得する(健康保険法35条)。
健康保険への加入が義務付けられる適用事業所とは、①国、地方公共団体又は法人の事業所又は事務所であって、常時従業員を使用する者、②厚生年金法6条1項1号に規定された事業の使用者であって、常時5人以上の従業員を使用するもの、及び③船員として船舶所有者に使用される者が乗り組む船舶のいずれかに該当するものをいう。事業者が法人であれば、労働者の人数、事業の内容を問わず適用事業所となる。
適用事業所で使用される者は、原則として被保険者となる(健康保険法3条1項本文)が、次のいずれかに該当する場合は、日雇特例被保険者となる例外的な場合を除き、被保険者となることができない(健康保険法3条2項、健康保険法3条1項但書)。
①船員保険の被保険者
②臨時に使用される者であって、日々雇い入れられる者で1カ月を超えない者又は2カ月以内の期間を定めて使用される者で所定の期間を超えない者
③所在地が一定しない事業所に使用される者
④季節的業務に使用される者(継続して4カ月を超えて使用されるべき場合を除く)
⑤臨時的事業の事業所に使用される者(継続して6カ月を超えて使用されるべき場合を除く)
⑥国民健康保険組合の事業者に使用される者
⑦後期高齢者医療の被保険者等
⑧厚生労働大臣、健康保険組合または共済組合の承認を受けた者(健康保険の被保険者でないことにより国民健康保険の被保険者であるべき期間に限る)
⑨その1週間の所定労働時間が同一の事業所に使用される短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律2条に規定する通常の労働者(以下この号において「通常の労働者」という)の1週間の所定労働時間の4分の3未満である同条に規定する短時間労働者(以下この号において「短時間労働者」という)又はその1カ月間の所定労働日数が同一の事業所に使用される通常の労働者の1カ月間の所定労働日数の4分の3未満である短時間労働者に該当し、かつ、イからニまでのいずれかの要件に該当するもの
イ.1週間の所定労働時間が20時間未満であること
ロ.当該事業所に継続して1年以上使用されることが見込まれないこと
ハ.報酬について、厚生労働省令で定めるところにより算定した額が、8万8,000円未満であること
ニ.学校教育法規定する高等学校の生徒、同法に規定する大学の学生その他の厚生労働省令で定める者であること
すなわち、事業承継M&Aの対象会社である中小企業、零細企業において、主として加入が問題となる短時間労働者については、当該事業所の通常の労働者の1週間の所定労働時間及び1カ月の所定労働日数が4分の3以上であれば、当該短時間労働者は健康保険加入の対象となる。
また、当該事業所の通常の労働者の1週間の所定労働時間もしくは1カ月の所定労働日数が4分の3未満であったとしても、健康保険の被保険者501人以上の企業(特定適用事業所)の場合、①所定労働時間が週20時間以上、②1年以上雇用が見込まれる、③賃金の月額が8.8万円以上、④学生でない、という要件を満たす場合は、短時間労働者であっても、医療保険(健康保険)の加入の対象となる。
ただし、通常の労働者及びこれに準ずる者(1週間の所定労働時間が同一の事業所に使用される通常の労働者の1週間の所定労働時間の4分の3以上であり、かつ、その1月間の所定労働日数が同一の事業所に使用される通常の労働者の1月間の所定労働日数の4分の3以上である短時間労働者をいう)の総数が常時500人以下の事業所の場合は、現時点では加入の対象とはなっていないものの、上記①から④の要件を満たす短時間労働者については、労使の合意によって加入の対象となり得る。
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